富士通のスパコン事業は現在200億円だが、15年度には5倍の1000億円に増やす計画を策定した。そのカギを握るのが「京」の技術成果の活用だ。「京」に搭載されたチップ「SPARC64VIII」は商用機向け改良が始まっており、来春以降には新型チップを搭載した商用スパコンも販売したい考え。すでに大学や海外ユーザーからの引き合いが来ているという。
大手製造業だけでなく、中小企業の潜在的なスパコン需要を吸い上げるため、新型の商用スパコンを活用したクラウドシステムでの共同利用サービスを検討している。
1000億円事業に引き上げるのは至難だが、間塚道義会長は「スパコン事業の売り上げを3000億円にしたい」と豪語する。これは、1兆円といわれる世界のスパコン市場で3割を握りメーンプレーヤーになるという意思表示だ。
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学術分野や産業界でかなり使われているスーパーコンピューターだが、ビジネスとして軌道に乗ったケースはない。かつて米政府の手厚い保護と莫大(ばくだい)な助成に守られ、世界市場を席巻した米クレイ・リサーチでさえ、倒産の憂き目に遭っている。富士通も1990年代後半にベクトル方式のスパコン事業から撤退しており、「京」はいわば、スパコン技術者たちの起死回生の成果だ。しかし、スパコンが利益を生むビジネスに成りうるのか、先は見えていない。スパコンから「スーパー」の冠が消えるくらい“普通”に使われるには、ポスト「京」で上を目指すだけでなく、下への展開こそ急がなければならない。(芳賀由明)