【開発物語】富士通のスパコン「京」 逆転の発想、周波数下げ省電力 (6/7ページ)

2011.8.22 05:00

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」【拡大】

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 富士通のスパコン事業は現在200億円だが、15年度には5倍の1000億円に増やす計画を策定した。そのカギを握るのが「京」の技術成果の活用だ。「京」に搭載されたチップ「SPARC64VIII」は商用機向け改良が始まっており、来春以降には新型チップを搭載した商用スパコンも販売したい考え。すでに大学や海外ユーザーからの引き合いが来ているという。

 大手製造業だけでなく、中小企業の潜在的なスパコン需要を吸い上げるため、新型の商用スパコンを活用したクラウドシステムでの共同利用サービスを検討している。

 1000億円事業に引き上げるのは至難だが、間塚道義会長は「スパコン事業の売り上げを3000億円にしたい」と豪語する。これは、1兆円といわれる世界のスパコン市場で3割を握りメーンプレーヤーになるという意思表示だ。

 ≪FROM WRITER≫

 学術分野や産業界でかなり使われているスーパーコンピューターだが、ビジネスとして軌道に乗ったケースはない。かつて米政府の手厚い保護と莫大(ばくだい)な助成に守られ、世界市場を席巻した米クレイ・リサーチでさえ、倒産の憂き目に遭っている。富士通も1990年代後半にベクトル方式のスパコン事業から撤退しており、「京」はいわば、スパコン技術者たちの起死回生の成果だ。しかし、スパコンが利益を生むビジネスに成りうるのか、先は見えていない。スパコンから「スーパー」の冠が消えるくらい“普通”に使われるには、ポスト「京」で上を目指すだけでなく、下への展開こそ急がなければならない。(芳賀由明)

(次ページ)スーパーコンピューター「京(けい)」とは

  • 「京」の主な開発メンバー。半導体、システム、ソフトウエア、性能評価など多様な部門の人材が「世界最速」を目指して集まった=川崎市中原区
  • 東日本大震災でSPARC64VIIIの製造ラインも被害を受けたが、24時間態勢で復旧作業を急ぎ、世界最速の性能テストに間に合わせた=富士通セミコンダクター子会社の宮城工場
  • 逆転の発想でこれまでにない低消費電力を実現した「SPARC64VIII」の拡大図
  • 計算速度で世界ランキング1位に選ばれた「京」について記者会見する理化学研究所の野依良治理事長(左から2人目)ら=6月20日
  • ラック1台には「SPARC64VIII」を8個搭載したCPU102個が収納されている