【開発物語】富士通のスパコン「京」 逆転の発想、周波数下げ省電力 (5/7ページ)

2011.8.22 05:00

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」【拡大】

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 LSI開発統括部プロジェクト課長の吉田利雄さん(38)は汎用サーバー開発部門にいたが、「世界一を目指すなら」と、正式スタートの前に「有志でゲリラ的に勉強会を開いた」ほど前のめりだった。マネージャーの山崎巌さん(43)は、MPUの信頼性確保に心血を注いだ。「計算で出した故障率を積み上げると、とんでもない数値になってしまった」ため、「1けた違う目標」を設定して関係会社とも協力し故障つぶしに奔走した。

 富士通研究所にいた酒井憲一郎さん(43)はスパコンとは無縁だったが社内募集をみて「チャレンジしよう」と決意。「京」のファイルシステム開発を担当した。

 年7.2%成長予測 「爆発的に広がる手前」

 ≪MARKET≫

 世界初のスーパーコンピューターを開発した米コントロールデータと、そこを飛び出した技術者が設立したスパコン専業メーカーのクレイ・リサーチはともに経営破綻。1990年代に乱立したスパコン事業はほとんどが姿を消した。スパコンは学術分野だけでなく産業界でもいまや不可欠な存在だが、高性能機で数十億円もする超高価なシステムの市場は限られていた。

 ただ、富士通は「爆発的に広がるちょっと手前にある」(井上愛一郎常務理事)と分析し、市場拡大を疑わない。米調査会社は、世界のスパコン市場(金額)は2011~15年まで年平均7.2%で伸びると予測している。クラウドシステムの普及によりサーバー需要がマイナス5%前後で減少する見通しのなか、高性能化と低価格化の進展がスパコン需要の裾野を広げつつあるようだ。

(次ページ)「スパコン事業の売り上げを3000億円にしたい」と豪語

  • 「京」の主な開発メンバー。半導体、システム、ソフトウエア、性能評価など多様な部門の人材が「世界最速」を目指して集まった=川崎市中原区
  • 東日本大震災でSPARC64VIIIの製造ラインも被害を受けたが、24時間態勢で復旧作業を急ぎ、世界最速の性能テストに間に合わせた=富士通セミコンダクター子会社の宮城工場
  • 逆転の発想でこれまでにない低消費電力を実現した「SPARC64VIII」の拡大図
  • 計算速度で世界ランキング1位に選ばれた「京」について記者会見する理化学研究所の野依良治理事長(左から2人目)ら=6月20日
  • ラック1台には「SPARC64VIII」を8個搭載したCPU102個が収納されている