婦人下着大手のワコールホールディングスには、社員の出退勤を管理するタイムカードがない。かつて労使関係の悪化からストライキ寸前になるなど、経営陣と社員の関係が破綻の危機に直面。この苦い経験から、創業者の塚本幸一社長(当時)がたどりついたのが、社員を徹底して信頼するという「相互信頼の経営」だった。世代が変わった今日でも、同社を支える精神的柱として脈々と息づいている。
戦後の高度成長期のまっただ中、多くの会社で労働組合が誕生し、従業員と経営者の理想的な関係が模索された。しかし、会社が急速に発展する一方で労働問題が深刻化し、多くの企業で激しい労使対立やストライキに直面するなど、労使関係は悪化した。
ワコールも例外でなかった。昭和21年に創業、日本社会への洋装文化の浸透とともに女性下着が急速に普及し、会社は右肩上がりに成長した。すべてが順風満帆のようだったが、水面下では労使対立がうごめいていた。