最大の難関は、起業のための資金調達。「ある銀行から、はっきりと言われたんですよ。『われわれはお金のあるところに貸す。お金のないところには貸しません』と。明らかな矛盾じゃないですか?」。損をしてでも貸せとは言わないが、「技術や商売がわかる『目利き』がどこにも見当たらない」。
ゆえに足元の経営は苦労が多いが、「長期的には、何も心配していない」と雨堤は自信たっぷりだ。なぜなら、「2020年には間違いなく人々は電気自動車を乗り回し、スマートシティに住む時代になっている。つまり、自動車用電池も住宅用電池も巨大市場に成長することは間違いない」からだ。
現在は研究所での作業の傍ら、技術コンサルティングで日本国内はもとより、アジア、北米を飛び回る毎日。顧客は世界中に散らばっている。
郷里の英雄、高田屋嘉兵衛は択捉(えとろふ)航路を開拓し、対露外交に力を尽くした。今、雨堤は世界を相手にビジネスを展開する。「鳥飼から世界へ」。雨堤のモットーは、郷里の英雄の志を継ぐものでもある。=敬称略(松尾理也)