本格的な生産ラインに数十億円単位の設備を投入した後で修正カ所が見つかれば、莫大(ばくだい)な追加投資は避けられない。
このため試作ラインには、量産ラインと同様の工具やカッター類を導入。折しも検証作業を繰り返した時期は、23年の東日本大震災の前後。製品を出荷できない日々が続いたが、一方で試作に「がっちり取り組むことができた」(塩見主管)という。
燃費性能を改善するため、最も工夫したのは「プーリー」と呼ばれる滑車の工夫だ。CVTはエンジンにつながって回転するプーリーと、タイヤを回転させるプーリーを金属ベルトでつなぐ。CVT8では、両プーリーの軸を微妙に細くすることで、変速比の幅を広げ、高速走行時にはエンジンを低回転化して燃費を向上させ、発進時には力強い加速を実現した。
さらに、粘性の低いオイルを新開発するなどしてCVTの摩擦抵抗を約4割低減。一連の取り組みにより、当初の目標だった10%を上回る燃費性能の向上を実現した。