平成3年6月、大屋の命を受けて常務・不動産事業局長に就任した横尾康裕(故人)は部下を酒に誘っては熱く説き続けた。
といっても横尾の社歴はバス一筋で、不動産はずぶの素人だった。それでも前任のバス担当の取締役時代には、「高速バス年間売上高100億円計画」をぶちあげ、九州外に路線拡大。昭和63年度に60億円だった売上高を5年間で100億円に押し上げた。
横尾は、バス事業の責任者でありながら、不動産事業の「副業」扱いに不満を感じていた。
「住宅はもっと伸びるはずですよ!」。横尾が役員会で意見したところ、久々のワンマン経営者となった第12代社長、大屋麗之助=12月5日、90歳で死去=はこう言い放った。
「そこまで言うならお前がやってみろ!」
この一言で横尾の不動産事業への抜擢が決まった。この頃、大屋の肝いりで進めた西鉄福岡(天神)駅周辺開発「ソラリア計画」は軌道に乗り出していた。大屋が「次の一手」と考えていた住宅開発を任せるには、自分以上に「いけいけドンドン」の横尾が適任だと考えたようだ。
横尾が不動産事業局長に就任した平成3年は折しもバブル崩壊の年だった。景気の減速感が広がり始めていたが、横尾は「九州各地からの福岡市への人口集中はまだ続く。勝算はある」と踏んだ。横尾は就任直後、朝日新聞の取材にこう語っている。
「(不動産事業は)もっとも成長している分野だ。これまで培ってきた基盤に加え、さらに事業拡大を図るなど、自前の強気で勝負したい」
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「やり始めたら一気にやれ!」。これが口癖の横尾はまず、独自のマンションブランド「サンリヤンシリーズ」を立ち上げた。サンリヤンとは、英語の「太陽」(SUN)とフランス語の「明るさ」(RIANT)を組み合わせた造語。スペイン語の「太陽」(SOL)とイタリア語の「空気」(ARIA)を合わせた「ソラリア」もそうだが、西鉄はこういう“無理やり感”の漂うネーミングが大好きなのだ。