従来のような数百区画の住宅団地では、用地買収から造成完了まで10年前後を要する。この間に地価が下落すれば、販売価格も下げざるを得ない。そこで区画数を20戸以下に抑えて用地買収から造成、住宅建設までを1年間ほどでやってしまおうと考えたのだ。
電鉄会社がこのような中小デベロッパーの領域にまで手を染めるのは珍しい。
だが、鈴木の戦略は当たった。第一弾として8年10月に発売した西鉄大牟田線大溝駅(福岡県大木町)近くの「サニーヴィラおおみぞ」を皮切りに完売が相次いだ。「西鉄ホーム」というハウスメーカーを名乗ったことも「西鉄さんなら、いい加減な物件は売らないはずだ」と顧客に安心感を与えた。
手応えを感じた鈴木はサニーヴィラを次々に売り出した。12~17年の福岡県内での戸建て分譲住宅の着工戸数は、大手住宅メーカーを抑えて6年連続で1位に輝いた。
当時は「失われた20年」の真っ只中。全国の景気が冷え込む中で事業を拡大できたのは、糸島、筑紫野両市などを含めた現9市8町の福岡都市圏が右肩上がりで広がり続けたことも大きい。国勢調査によると、平成7~17年の10年間の国内人口は1.7%増にすぎなかったが、福岡都市圏は9・6%増(20万4573人増)という驚異的な伸びを示している。
西鉄はそんな都市圏拡大を下支えしたといえる。鈴木はこう語る。
「土地の売買だけで街は出来ない。私たちは住宅まで責任を持って建てます。街を作っていく。それが西鉄の誇りなんですよ」
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沿線人口の増加に伴い、天神大牟田線ではラッシュ時の乗車率が150%を超えた。これに伴い、西鉄は輸送力増強に取り組んだ。
天神大牟田線と貝塚線の年間乗客数が1億4千万人を超えた平成4年度には、福岡(天神)駅ビルを大改造する「ソラリアターミナルビル」の工事が始まった。ビル2階部分の駅ホームは、8両編成対応から10両編成向けに拡張した。この結果、ラッシュ時の輸送力を23本・143両から24本172両に増やした。
拡張工事は200人前後の社員が毎日、終電後の午前0時過ぎから始発前の午前5時ごろまで作業にあたった。新生・福岡駅が営業を始めた9年9月27日、電車局営業運転課長として現場指揮にあたった柳信治(63)=後に常務・鉄道事業本部長、現西鉄ステーションサービス会長=は、始発電車を見送ると「よくも大きな事故もなく出来たもんだ…」と胸をなでおろした。あまりの疲労感に仲間と大喜びする気にもならなかった。柳は後輩にこうエールを送った。
「西鉄は運輸部門や不動産部門が一体となって地域の発展のために働いてきた。東京一極集中が進む中、その役割はますます大きくなるでしょう」
(敬称略)