江戸時代の数少ない女性の日記として残る、和歌山城下で暮らした女傑、川合小梅の「小梅日記」などにも頻繁に登場し、贈答品として親しまれたことがうかがえる。駿河屋の和菓子は紀州人にとっては誇り高き菓子であり続けたのだ。
「歴史や文化の面での重要性を訴え、『何とか残そう』と市民が運動を起こせば、支援を考えるスポンサーもあるかも」とかすかな期待を込める木下事務局長。製造設備や製造技術が残っているうちならば、あるいは駿河屋の和菓子を再び楽しむことができる日が来るかもしれない。ただ、そうでなければ、駿河屋の味は、過去の遺物として永遠に歴史のなかに埋もれてしまうだろう。