「原発ゼロ」の影響は、今冬も避けられそうにない。優先的に審査が進められている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)でさえ、書類の大幅な不備で再稼働は秋以降になる見込み。このまま火力発電頼みの状況が変わらなければ、燃料コストの上昇による電気料金の再値上げが現実味を帯びてくる。
当初、原子力規制委員会の審査にかかる期間は「半年程度」(関係者)との見方が強かったが、蓋を開けてみれば、基準地震動(想定される最大の揺れ)や津波の高さなどをめぐって、規制委と電力各社の意見が食い違い、審査は長期化。
川内1、2号機は今年3月、優先審査を受ける原発に選ばれ、4月末に安全確保の基本方針を示した「原子炉設置変更許可」の補正申請書を提出。今夏の再稼働に期待がかかったが、火災対策や重大事故対策など27項目42カ所の記載漏れを指摘されて修正作業を余儀なくされ、6月24日にようやく再提出にこぎ着けた。
審査申請が出ているのは現在、川内1、2号機も含めて全国で12原発19基。このうち、川内と同じ加圧水型(PWR)の大飯3、4号機と高浜3、4号機(いずれも福井県)の4基を保有する関西電力の八木誠社長は「川内原発で審査のひな型がつくられることで、後続プラントの審査が効率化する」と期待するが、実際に再稼働にこぎ着けるには、地元自治体の了解など多くのハードルをクリアしなければならない。
再稼働が遅れれば遅れるほど、火力に頼る発電コストが電力各社の経営を圧迫する。北海道電力はすでに料金再値上げの検討を表明。管内の標準家庭の電気料金(8月分)が8509円と全国で最も高い東京電力も、再値上げについて「年末までに判断する」(数土文夫会長)方針だ。