膜は、水の分子は通ることはできても、水に溶けた塩類は通過できない0・1ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の極微細な穴が無数に空いている。東洋紡は昭和54(1979)年、中が空洞になった大量の糸を織り重ねた「中空糸型」と呼ばれる海水淡水化膜の開発に成功。その膜を円柱状にして塩水を通す仕組みの装置を完成させた。
1つの円柱に150万本の糸を織り込む高度な技術力があって初めて成し遂げた開発で、東洋紡は「断面は緻密に編まれた層と粗めの層の二重構造で、繊維事業で培った技術で目詰まりが少ない高品質の膜をつくることができた」と説明する。
一方、糸を材料とする中空糸膜の開発は、化学メーカーの米デュポンが素材をうまく生かせずに断念。米ダウケミカルも塩分濃度の高い地下水の淡水化は可能だったが、海水では十分な結果を出すことができなかったという。
海水の相性
それではなぜ、中東での受注が相次いだのか。