【番頭の時代】(2)「決断」形に 赤字の40年に終止符 (1/7ページ)

2014.11.12 05:00

 □青山繁弘・サントリー副会長

 ■「おやじを男にするのが、何よりの喜び」

 東京都中央区の料亭。米ウイスキー大手、ビームの最高経営責任者(CEO)、マット・シャトックとサントリーホールディングス(HD)会長兼社長の佐治信忠(現会長)は、会席料理に舌鼓を打ちながら、やや赤く染まった顔でほがらかに語り合った。昨年11月のことだ。

 「貴社の力で『ジム・ビーム』の販売を伸ばして頂き、感謝している」

 真情あふれるシャトックの言葉に、佐治の傍らにいたサントリーHD副社長、青山繁弘(現副会長)もうなずいた。

 翌日、東京・台場のサントリーHD東京本社。佐治はシャトックに対し、前夜の酒席ではおくびにも出さなかったビーム社の買収について、おもむろに水を向けた。シャトックのまんざらでもない表情を見て、佐治は「わが社の『傘下入り』に好意的だ」と確信し、ビーム買収交渉の開始を青山に命じた。

 サントリーHDが約1兆6000億円を投じたビーム社の巨額買収劇。社運をかけたプロジェクトを仕切った青山は、役員歴20年の「大番頭」だ。

 青山は正月を返上し、ほとんどの作業を片手に収まる人数で進めた。「経営企画部門が肥大化すれば、必ず非効率になる。大事業も小人数で取り組むべきだ」との考えからだ。2カ月後、サントリーを蒸留酒世界10位から3位に躍進させる大型買収が発表されたが、青山は終始、表舞台を避けた。

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