飛び抜ける自社株買い
ただし、今ではこうしたIBMの戦略は見せかけの実績を作るためのものだったと批判されている。米紙ニューヨーク・タイムズのアンドリュー・ロス・ソーキン記者は「IBMは00年以降、自社株買いと配当に1380億ドルを費やしたが、設備投資には590億ドル、買収には320億ドルしか使っていない。IBMが誤った目的に資金を使ってきたことは間違いない」と指摘する。
12年にCEOに就任したロメッティ氏は今年1月に低価格サーバー事業のレノボ・グループへの売却を決めるなど、事業の選択と集中を加速させている。さらにパルミサーノ氏が約束した収益目標も撤回し、今後は収益を削ってでもクラウド事業や人工知能への投資を増やす考えだ。
しかしこうした成長分野ではグーグルやアップル、アマゾン・コムといった新興IT企業との対決は避けられない。
ロメッティ氏は「戦略は間違っていない。今は改善を続けるためのスピードが求められているときだ」と覚悟を決めているが、バーンスターン・リサーチのアナリスト、トニー・サカノヒ氏は「新しい分野への移行に十分な早さがない」と冷ややかだ。(ワシントン 小雲規生)