14日投開票の衆院選では、急速に進む円安への対策が争点の一つになっているが、8日に発表された7~9月の国内総生産(GDP)改定値では、この問題が安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の難しさを浮き彫りにしていることが如実に示された。すなわち、為替差益による増収という恩恵を受ける企業と、円安に伴う原材料高によって利益が圧迫される企業の落差。アベノミクスの果実はなお、まだら模様だ。
街工場が建ち並ぶ東京都葛飾区の下町。その一角にあるゴム製品メーカー「杉野ゴム化学工業所」の杉野行雄社長は「現在の経済対策には現実味がなく、われわれ中小企業には届いていない」と訴える。杉野社長は、中小企業が連携して開発した深海用無人探査機「江戸っ子1号プロジェクト」の中核メンバーだ。
4月以降、同社の経営には逆風が吹き続けている。要因は消費税増税。28年前からゴム製品をホームセンターに卸しているが、初めて取引実績が前年を割った。さらに、最近の円安基調で、海外から輸入するゴムの原料が高騰、収益の圧迫要因となっている。大手メーカーとの交渉でも「原材料の値上がり率がどの程度か見極めにくいため、当面は据え置いてほしい」と要請され、価格を転嫁できない状況だという。