だが、市場が成熟したわけではなさそうだ。高齢者を中心に、急須で飲む人はいまだに多い。その分だけ緑茶飲料への“くら替え”が望めるほか、缶やペットボトルになじんだ層が高齢化するだけでも一定の拡大が期待できる。
一方、健康志向を背景に、緑茶への注目は再び高まっている。近年は、各社がトクホ(特定保健用食品)緑茶の販売に注力。ここを舞台に「第6次緑茶戦争」が起こり、市場は再び盛り上がりをみせている。伊藤園は、長期的には市場規模が5360億円に達すると予想している。
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≪FROM WRITER≫
20年前、貧乏旅行で半年かけて世界を一周したことがある。米国、欧州、アジアと巡ったが、米国にいる時点で早くも日本食に飢え始めた。
当時は今ほど日本食が海外に普及していなかった。日本食レストランの味はおいしいとはいい難かった。
緑茶もそうだった。無性に飲みたくなり、いくつかスーパーをのぞいてみたが、米国と欧州では見つけられなかった。タイまで来てようやくコンビニで緑茶を発見したときの喜びは、今後もけっして忘れることはないだろう。
健康志向を背景に、「お~いお茶」がシリコンバレーでブームになっているという。自分に直接関係があるわけではないにもかかわらず、日本の良さを分かってもらったようでうれしくなる。
できれば、伊藤園が味や香りの向上に多大な労力を払っている事実も知ってほしい。そこには、決して品質で妥協しない日本人の神髄が詰まっているからだ。 (井田通人)
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