ただ、実現にあたり大きな課題があった。高炉スラグを多く使うと、コンクリートの仕上がり表面が肌荒れする「アブサンデン現象」が起きやすくなる。また寒さや暑さが厳しくなる冬や夏の工事では、コンクリートが硬化したり強度を帯びるのに時間がかかったりする。ひび割れが生じる恐れもある。
この壁を乗り越える上で同社が目を付けたのは、コンクリートの硬化を促す決め手となる「刺激剤」の新たな開発だった。刺激剤の材料そのものに加え、刺激剤と高炉スラグ、水、骨材などとの組み合わせも研究を重ねた。その結果、最適な配合を見いだし、ポルトランドセメントをすべて高炉スラグに置き換えてもアブサンデン現象の発生を抑え、冬や夏の工事でも安定して使えるコンクリートに道筋を付けた。強度の発揮などの点でも一般的なCO2低減タイプとされる「高炉B種コンクリート」と同等の品質を確保した。
表面肌荒れ・ひび割れなし
実際に性能を確かめる必要があるため冬の工事として2013年2月に横浜市にある同社技術センター構内で、夏の工事として13年8月に川崎市にある大手鉄鋼メーカーの圧延工場で、それぞれ環境配慮コンクリートを使った工事を実施。施工後の状況を一定期間観察したところ、アブサンデン現象やひび割れは見られず、コンクリートの硬化は順調に進み強度も発揮した。ポルトランドセメントの代わりに高炉スラグを多く使用しても、実用面での問題はないことが確認された。