デジタルグリッドルーターの内部。インバーターとコンバーターを組み合わせ、電圧や周波数を変換する【拡大】
同社は、電源開発(Jパワー)の技術部門から転じた阿部力也・東大特任教授を中心に2013年に創業した。阿部氏は、電力を制御するパワーエレクトロニクスとICT(情報通信技術)を融合させる「デジタルグリッド技術」を提唱。その一つの形がアフリカでの事業だが、日本では再生エネの安定利用を目指す。
◆生産者指定の購入も可能
同社が開発した制御装置「デジタルグリッドルーター」は蓄電池と組み合わせて利用し、コンピューターで電力量や送電経路、送り先を指定することで、電力を自在に送り分ける仕組み。太陽光パネルは天候によって発電量が上下するのが弱みだが、ルーターを置いた建物同士で電力の過不足を補い合えば、太陽光導入のハードルを下げられる。
今年度から環境省のプロジェクトに採用され、石川県七尾市の大手旅館で実証実験を始める。2棟の片方に太陽光発電と温泉熱発電、もう片方にバイオディーゼル発電設備を置き、ルーターと蓄電池を介した電力融通のノウハウをみがく。
射程にあるのは、16年の電力小売り完全自由化。電力会社が再生エネを買い上げ一括送電する現行制度が変わり、一般家庭も電力会社を選べるようになる。
ルーターはネットワーク上の“住所”に当たるIPアドレスを割り振り、通った電力量などを記録する仕組み。送電網の要所に整備すれば、建物間やコミュニティー内で電力を融通するだけでなく、「たとえば『北海道の地熱発電』というように、生産者を指定して電力購入することも可能」(陶山社長)という。
途上国と日本などの先進国の次に狙うのは、送電網の整備が間に合わず、大規模停電のリスクが高まっている新興国。需給バランスを制御する日本発のデジタルグリッド技術を武器に、「誰もが自由に電力を利用できる未来」(同)を実現するのが目標という。(山沢義徳)