細かい部品ではなく、ボディーの大部分や骨格にまで他素材が使用されたことに対し、鉄鋼業界の衝撃は大きかった。
迎え撃つ鉄鋼各社も手をこまねいてはいない。強度の高い高張力鋼板(ハイテン)による軽量化や世界中に拠点を持つ供給態勢、価格競争力で、他素材に対する優位性を確保する戦略だ。
JFEスチール薄板セクター部自動車ユニットの西村恵次・主任部員は「ハイテンで鋼板を薄くすれば現行の設計でも軽量化できる。主要素材メーカーとして着実に貢献する」と力を込める。
製鉄過程で添加物などを加えたハイテンは強度が340メガパスカル(1メガは100万)以上の鋼板。1メガパスカルは1平方ミリメートル当たり約0.1キログラムの力で引っ張っても耐えられることを示す単位で、ハイテンは約34キログラム以上の強さになる。強度を上げるほど薄くしても安全性が確保できるため、薄肉化による重量削減が可能だ。
桁違いの競争力
14年の日系自動車メーカーによる1台当たりのハイテン使用率はすでに約6割に達した。980メガパスカル以上と、さらに強度を高めた「超ハイテン」の採用も増えている。西村氏は「海外は4割に満たない地域もある。普及余地は大きい」と世界で攻勢をかける考えだ。