巨額を投じたシャープ堺工場=堺市堺区【拡大】
主力の液晶事業でリスク情報が上層部にうまく伝わらなかったことに最もショックを受けたのは、ほかならぬ高橋興三社長だろう。一昨年6月の就任以来、現場の声を上層部に直言できる企業風土づくりに心を砕いてきたからだ。
過剰投資への反省
「社員が自らの判断で挑戦し、上からの指示を待たない。そういう企業風土に変えたい」
高橋社長は就任前の会見でこう力を込めた。
背景には、トップダウンの傾向が強すぎた独特の社内の雰囲気が、経営危機を招いた液晶事業への過剰投資に突き進ませたとの反省があった。社内に経営トップの判断に意見したり、水を差す情報を報告したりできる雰囲気はなかったといわれる。
特に「液晶のシャープ」という一時代を築いた町田勝彦氏(現特別顧問)の社長時代に経営トップのカリスマ化に拍車がかかった。後継の片山幹雄氏(現日本電産副会長)の社長時代も続いた液晶事業への巨額投資に、社内から疑問の声は上がらなかった。逆にアイデアマンで明確にビジョンを示す片山氏の指示を待つ傾向が強まったとされる。