その結果、高血圧の人ほどカカオポリフェノールを多く含んだチョコレートの摂取によって血圧が大きく下がった。一般に善玉コレステロールといわれているHDLコレステロール値もチョコレートの摂取で統計的に有意に上昇した。血圧の降下とHDLコレステロール値の上昇は、動脈硬化のリスク低減につながる。一方で、体重や肥満度を表すBMIに変化はなかった。
調査後の分析で、動脈硬化などの検査に利用する酸化ストレス指標と炎症指標の数値も、チョコレート摂取後に統計的に有意に下がったことも判明。この数値が高いほど動脈硬化のリスクが高まるが、今回の実証実験で酸化ストレス指標と炎症指標が大きかった順に上位から4分の1までの被験者は、チョコレート摂取後に両方の指標が低下した。
研究を監修した抗酸化食品研究の第一人者である大澤俊彦・愛知学院大学教授は、「カカオポリフェノールが抗酸化成分として働き、動脈硬化のリスクを低減させたと考えてよい」と話している。
さらに、記憶や学習能力をつかさどる脳内の「海馬」という部分に特に多く存在し、脳神経細胞の発生、成長、神経伝達物質の合成促進などに関与するタンパク質の一種であるBDNF(脳由来神経栄養因子)がチョコレートの摂取で統計的に有意に増加することも分かった。