■借金苦で自殺者が後を絶たないインドの農家
木綿の原産地国であるインド北西部は、広大な綿花畑が広がる地帯だ。この地で綿花を栽培する農家の生活はあまりにも厳しい。毎年、ハイブリッド(遺伝子組み換え)種と農薬を購入するが、その資金は高利な借金に頼り、収穫後に綿花価格が下がれば残るのは借金だけ。
フェアトレード・インドのアビシック・ジャン事務局長は「借金の返済に困った農民の自殺が後を絶たない。インドの自殺者の7割が綿農家で毎年1万5000人以上だ」と現状を話す。「生産者の悲しさを知らず綿製品を身に付けてきた」というのは、大手アパレルメーカー出身でフェアトレード コットン イニシアティブ代表の入江英明氏。創業して1年だが、意欲的にインド各地の農場、縫製メーカーを回り、日本で展開するフェアトレード商品の仕込みに余念がない。入江氏に同行してインドの綿花栽培の農場を取材した。
向かったのは、インド中部に位置するマディヤ・プラデーシュ州インドール。中心部から南へ80キロのジャムニヤ村に、オーガニック(有機栽培)綿花の栽培法を農民に教えるヴァスダ協同試験農場がある。
「農薬で地中の微生物が減り土地が痩せる。農薬を吸い込み農民は健康を害する。借金も膨らむ。ここでは無農薬の必要性と栽培法を教えている」と入江氏は説明する。現在6万ヘクタールの農地に3万人の農民が指導を受け、無農薬栽培を手掛けているという。
農民たちは組合を作り、適切な管理を順守することでフェアトレード認証を得る。その後、安定価格での綿花買い取りとは別にフェアトレードプレミアム(奨励金)が組合に支給される。ジャムニヤ村の組合には、累計1億円以上のプレミアム資金が支給され、この資金で灌漑施設や学校が設けられた。