東京電力が4月1日、大手電力で初めて持ち株会社に移行する。垂直統合で一手に担ってきた発電、送配電、小売りの各事業を分社し、機動的に動ける経営体制にすることで収益力を高める。業績は、原油安による燃料費の減少で黒字化しているが、先行きの収益の鍵を握る柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働の見通しは依然、立っていない。原発事故の賠償金は膨らみ、4月からは電力小売りの全面自由化も始まるなど環境は厳しく、持ち株会社化が「脱国有化」に向けた経営改革を後押しするかは未知数だ。
競合他社と差別化
「新たにホールディングカンパニー制に移行するが、取り組まなければならないことは多い」
事故から5年を迎えた3月11日、福島第1原発で訓示した東電の広瀬直己社長は、福島復興に全力を挙げることを改めて誓うとともに、持ち株会社制についても触れ、社内の引き締めを図った。
新体制は、福島第1原発の廃炉や原発事業を担う持ち株会社「東京電力ホールディングス」の傘下に、発電会社、送配電会社、小売り会社を置く。各社が戦略を策定して資金を調達し、独立採算で事業を進める。意思決定の速さを生かし、提携で競合他社との差別化も図る。