もう一点、今回の件に関して、決して些末とは言えないことがある。それは車両固有の走行抵抗を計る方法だ。これは一定の速度から惰行させた時の速度低下にかかる時間を計測するものだが、その計測方法を国交省が定めた計測法ではなく、米国の計測法で計測している点だ。
しかもこのルール違反は今回不正が認められた軽自動車だけでなく、他の数多くの車種でも行われていたことが分かっている。この測定方法は一概にどちらがより有利と言えないはずなので、法令違反をしてまで米国式測定方法にこだわる必然性がない。
組織ぐるみの隠蔽の裏に、おごりはなかったか
筆者はここについて欲得尽くの不正ではなく、三菱という企業の慢心や驕りの臭いを感じる。自らを勝手に例外扱いするエリート意識。相手が監督官庁であろうとも容喙されたくないという自己肥大。例えば、日露戦争の旅順攻囲戦で頑なに戦術転換を拒否した伊地知幸介少将の姿が重なるのだ。
それは冒頭で述べた2000年代に連続して発覚した三菱の「リコール隠し」に色濃く表れていたと思う。三菱のリコール隠しは1977年以降、不具合情報を運輸省(現・国交省)に届けず、内密に加修する闇改修が20年以上にわたって行われていたものである。もちろん全ての不具合が改修されたわけではなく、後述するが黙殺されたケースも多々ある。