通常、自動車の設計時に、部品の強度を決めるにはいくつかの段階を踏む。一番最初は強度計算によるものだ。次に試作部品による台上実験を行い。さらに経時劣化や過酷使用に備えたシミュレーションと、実走実験が行われる。同業他社では常識的に行われている確認だ。しかし三菱ではシミュレーションと実走実験を行わなかった。この態度も自らの技術に慢心し、自社には自社のやり方があるという頑迷さを感じるのみである。
2件の死亡事故という重大な問題が発生したにも関わらず、しかし三菱はここでも反省と謝罪を拒絶するのである。51件という不自然なタイヤ脱落事故の全てについて、原因は運送会社やユーザーの整備不良にあるとして突っぱねたのである。それは今後の死亡事故の可能性に目をつぶったということだ。企業倫理以前の話だ。人としての倫理の領域で何かがおかしい。
筆者は、当初このリコール問題が発覚した頃、三菱に対して、多少の同情を感じていた。社長とは言え雇われであってオーナー社長ではない。歴代社長の任期も、リコール問題の立て直しを託された結果特例的に長かった益子修氏を例外とすればせいぜい6年以内だ。