
出光興産の歴史と今後の予定【拡大】
ただ、経営側によると輸入原油は、15年度ではサウジ産が約40%とトップ。1月まで欧米の経済制裁を受けていたイラン産は約1%しかなく、創業家側の主張は現実にそぐわない部分がある。経営側は「サウジとはすでに緊密な関係にある」と主張する。
「身内」公益法人も
出光と昭シェルの合併承認には、年内に予定する出光の臨時株主総会で、株主の3分の2以上の賛成が必要になる。ただ、創業家側は総会で合併を拒否できる3分の1超の株式を保有しており、経営側が押し切るのは困難な状況だ。
こうした中で経営側は、創業家側が主張する株式保有比率に公益財団法人の出光美術館の保有分が含まれていると指摘。公益性が高い法人が経営に関与することに異議を唱えた。対する創業家側は、昭介氏が理事長を務める同美術館の議決権行使に支障が出ないよう定款を変更し合併反対に向け足場を固めた。
企業関連の公益法人による株式保有は、かつての株式持ち合いと同様、経営の自由度を確保する安定株主の側面を持つ。経営側にとって“身内”だったはずの公益法人の議決権が、経営判断の否定にまわった事実は、創業家と経営側の意思疎通が不十分な実情を浮き彫りにした。両者は今後も協議を重ねる予定だが、歩み寄りの道筋は見えない。(佐藤克史)