違いは、鴻海が「徹底的な管理」(広報担当者)で利益の実現を目指す点だ。下からの意見を吸い上げて全体をまとめていく「ボトムアップ型」の経営を目指していた高橋前社長は、現場の裁量に任せ、自ら判断する局面は少なかった。社員の主体性をうたい「てめえ(手前)でね。きちんと責任を持って仕事する強い気持ちの社員を増やしたいんだ」と発言したこともあった。だが、実態は放任であり緩慢な経営であった。シャープ幹部の1人は「鴻海は、シャープは自分の頭で考えることができないと判断し、細かく厳しく管理することにしたようだ」と打ち明ける。
鴻海による「コントロール」の意思は、戴社長のメッセージの中のコストカットに対する考え方からわかる。戴社長は「事業所を訪問した際、現場にはコスト削減の余地が多数ありました」と現場で見たままを強調し、リストラへの強い意欲をうかがわせている。
シャープは特に液晶の素材の仕入れ値が高く、利益を圧迫する要因となっている。「一人だけで高い消費税を払っている状態」(公認会計士)とも指摘され、戴社長も「徹底した原価低減」を打ち出す。「過剰な設備の撤廃」との表現も盛り込まれ、今後赤字事業に大なたが振るわれる可能性もある。