--つまり、大企業がそのチャットボットを社員に提供するかもしれないということですね
「はい。匿名で利用できるようにします。人事部にも、実際にどの人が利用しているか分からないようにすべきです。社員同士が否定的な烙印を押し合うことを防いで、チャットを使ってもらわなくては意味がありません。安価ながら、全従業員の心の健康を守り、仕事の能率を上げられる方法だと思います」
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学会やコミュニティーが現代技術を用いた療法に懐疑的な一方で、国内の大企業はそれを採用することの利益を理解しているという点は、興味深く、また勇気づけられる点だ。
鬱病をはじめとする心の病に対する社会の見方は未だに否定的だが、この現状が企業経営にもたらす悪影響は数字で測れるほど大きくなっている。それを知る企業は、革新的な製品に投資して事態の改善を図ろうとしている。近年、ワーク・ライフ・バランスの改善に焦点が当たっていることを考えると、今後、メンタルヘルスはもっと注目されるようになるだろう。ヒカリラボのゲームアプリやチャットボットは、拡大するメンタルヘルス市場でますます注目の製品になる。
関わる当事者すべてが、これほど明確にウィンウィンになれる製品を提供するスタートアップは稀有(けう)な存在だ。
文:ティム・ロメロ
訳:堀まどか
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【プロフィル】ティム・ロメロ
米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/