国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)はなぜここまで混迷してしまったのか。諫早市の宮本明雄市長(64)は「開門調査を命じる福岡高裁判決(平成22年12月)を、問題をまったく理解していない菅直人首相(当時)が悪と決めつけ、受け入れてしまった。開門にメリットはない」と断じた。(田中一世)
開門調査は「百害あって一利なし」です。農水省も分かっているはず。対策工事についても「地元の理解を得なければ着工しない」と言ってきたのに、6日になって一方的に着工を通知してきた。憤りを感じざるを得ません。長崎県や雲仙市とともに開門調査と対策工事の中止を強く訴えていきます。
平成9年に閉め切られた潮受け堤防の排水門を全開門すれば、農漁業に壊滅的被害が出て、洪水や高潮の危機を招きます。農水省も大変な事態になることはわかっていますよ。だから排水門の開閉操作により、被害を最小限にとどめるため制限開門を行うと言っているんでしょう。
とはいえ、制限開門であっても被害は免れません。まず本明川河口付近や調整池に定着している淡水魚は死滅するでしょう。干拓地の農業用水の源である調整池は海水が入り、使えなくなります。大雨が降って調整池の水が干拓農地にあふれ出したら農作物は塩水をかぶって全滅します。
懸念はそれだけではない。そもそも制限開門すら守られる保証はないんです。「防災上やむを得ない場合をのぞき、潮受け堤防の排水門を開放し、これを5年間継続せよ」。これが福岡高裁判決の主文です。常識的に考えれば全開門を命じていると解釈するのが普通でしょう?