開門派の原告団らはすでに制限開門に異を唱え、段階的に全開門するよう求めています。「制限開門では判決を守ったことにならない」として法的手続きに出て裁判所が開門を命じたらどうなるか。農水省は「司法判断だ」として全開門を強行するでしょうね。
つまり高裁判決の言う「開放」が何なのか、農水省と開門派原告団の主張がまったくかみ合っていないわけです。いくら「全開門はしないから信じろ」と言われても無理な話です。全開門への第一歩につながる開門準備に協力することは絶対にできません。
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そもそも開門にメリットはほとんど見出せません。
農水省は干拓工事完了前の14年、短期開門調査(約1カ月間)を実施しましたが、結果は淡水魚の死滅などの被害が生じただけ。有明海の環境改善は見られず、農水省は「今後開門調査は行わない」という方針を示したんです。
しかも現在は当時と状況がまったく異なります。干拓農地にはすでに多くの農家が入植し、農業は軌道に乗っています。湾内の漁業者はカキ養殖などに転換し、成功しています。開門はこうした生活を破壊する行為なんです。
農水省は、開門のための事前対策として海水淡水化施設の建設などに計330億円を費やすと言っています。開門後も施設の維持管理費などで年数十億円が必要となるでしょう。それだけのお金があるなら調整池の水質改善や漁業振興策に使った方がよほど効果が見込めるではありませんか。