偽装が発覚したホテルの記者会見では、経営者らが当初「故意の偽装はない」「お粗末なミス」と繰り返したが、あるホテル従業員は「あの会見は、あまりにお客さまをバカにしている。総料理長や総支配人が知らないはずがない」と怒りをあらわにした。不信感を持ったのは、消費者だけではなかったのだ。
別の関係者は「調理場に入る従業員なら誰でも知っている。なのに何で、誰も何も言わないのか」と嘆いた。「自分はこんなところで働いていたのか」。告発者たちも、名門ホテルの一員としての誇りを持っていただけに、客を欺く行為を重ねてきたことに忸怩(じくじ)たる思いがあった。
ホテル関係者らに取材を重ねて感じたのは、経営陣と、従業員らとの間に吹く微妙なすきま風だ。組織に対する無批判な従属と、閉鎖的な体質が不正の温床となる-。