「大飯ショック」が原発再稼働に暗雲をもたらしている。福井地裁(樋口英明裁判長)が21日、「万が一でも危険性があれば差し止めは当然」と関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を認めない判決を言い渡した。脱原発派は勢いづき、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を目指す九州電力は影響を懸念する。科学的知見もない「脱原発」ありきの判決が、エネルギー政策という国の根幹を揺らがす事態となっている。(小路克明)
訴訟の最大の争点は、大飯原発において耐震設計の目安となる「基準地震動」を超える揺れがあるかどうかだった。
関電側は当初、基準地震動を700ガル(ガルは加速度の単位)とし、「これを超える揺れは考えられない」と主張した。
裁判とは別に、大飯原発の安全審査を進める原子力規制委員会は現地調査を行った上で、基準地震動を引き上げるよう求めた。関電側は856ガルに修正した。
規制委の現地調査も、調査団メンバーに脱原発派の論客として知られる専門家を入れるなど客観性に疑問符は付くが、福井地裁の判断は、さらに上を行くものだった。
「地震大国日本で、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しにすぎない」
確かに平成19年の新潟県中越沖地震では、同県内の東京電力柏崎刈羽原発で、基準地震動の2.5倍の揺れがあった。建物上部にあるタービン施設付近で最大2058ガル、原子炉付近は最大680ガルだった。それでも原子炉は設計通りに停止した。