飛行機も自動車も、事故のリスクと高速移動のメリットを秤にかけて、人は利用する。リスクゼロはあり得ないが、限りなくゼロに近づけようと技術開発が進む。
原発も同じように、福島第1原発事故を教訓に、規制委が専門性に基づいた安全基準を策定し、電力会社に厳しい安全審査を課している。
だからこそ、同じ大飯原発3、4号機をめぐって大阪高裁は今月9日、「規制委の結論より前に、裁判所が稼働を差し止める判断を出すのは妥当ではない」と、再稼働差し止めを求める仮処分申請を却下した訳だ。
これに対し福井地裁は、科学的裏付けのない危険性をことさら強調し、「差し止めは当然」とした。規制委と電力会社が積み重ねてきた科学的議論を無視した司法の横暴としか言いようがない。
北海道大の奈良林直教授(原子炉工学)は「原子炉冷却系などについて、技術的に誤った部分があちこちにある。専門家から見ればこれは判決とはいえない」と語った。九電幹部は「この判決がまかり通るのであれば、原子力規制委の審査は何だったのか、ということになる」と憤る。
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判決は「国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土とそこに国民が根を下ろしていることが国富」であるとする。
豊かな国土とは何か-。狭く、資源に恵まれない日本にあって、先人は汗水垂らして世界に冠たる工業国家を作った。外貨を稼ぎ、国民の生活レベルを引き上げた。この工業国家に安価な電力は欠かせない。
工業だけではない。