「新工場を作るからには徹底的に効率にこだわろう…」。こう考えた酒見は、福岡県前原市(現糸島市)から購入していた造成地への移転を白紙に戻した。広さが不十分な上、従業員の通勤に不便で、都市ガス導管敷設などのコストもかさむと踏んだからだ。
「福岡の地場企業として、大手を振れるような本社にしたい」と幾つもの候補地を見て回り、ようやく行き着いたのが福岡市西区今宿青木の丘陵地だった。
敷地面積は3万6千平方メートルで、旧工場の3倍を誇る。最新のガスコージェネレーションシステムと太陽光発電を組み合わせ、工場内の冷暖房や電力を大幅に効率化させた。
新工場移転と合わせて、酒見は、「サッポロ一番」などで知られる業界3位のサンヨー食品との業務提携を進めた。
新工場で「長崎皿うどん」シリーズを製造し、「即席マルタイラーメン」など棒ラーメン系は佐賀工場(佐賀県唐津市)の製造ラインに一本化した。このほかの「屋台ラーメン」やカップラーメン「長崎ちゃんぽん」などはサンヨー食品に製造を委託した。
新工場稼働の平成25年1月。酒見は23年4月に常務執行役員として西部ガスに戻っていたが、稼働日にはお祝いに駆けつけた。そして3カ月後の25年4月、田中の後継として西部ガス社長に就任した。田中は酒見をこう評した。
「子会社出向をマイナスに捉える奴は多いが、酒見は違った。マルタイの意識改革を進めただけでなく、新工場や業務提携などすべて期待以上の成果を見せた。だから俺の後を任せたんだよ…」
(敬称略)