ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」、まさかの“お宝”に!? なぜ注目されているのか (2/6ページ)

 串間:はい。20年ほど前にイエバエを購入して、自分の農園づくりに生かそうとしていました。テレビでその様子が報道されていて、それを見たワタシは衝撃を受けました。当時、中部電力で働いていたのですが、「自分がやりたかったことはこれだ!」と確信して、会社に辞表を提出することに。23歳のときですね。

イエバエの製造室

イエバエの製造室

 新しい会社に就職して、ハエの事業に携わりたいなあと思っていたのですが、電力会社でちょっと働いたくらいの人間ができる仕事ではありません。会社にはロシア部隊とハエ部隊がありまして、ワタシはロシア部隊に配属されました。

 土肥:ということは、現地に足を運んで、面白そうな技術を購入していたわけですよね。それなのに、なぜハエ事業に携わることに?

 串間:先代が体調を崩して、会社の資金繰りがうまく回らなくなりました。給与の支給が遅れることもあって、1人、2人と辞めていくことに。従業員が減っていたので、イエバエに手が回らなくなってきたんですよね。交配を重ねて品種改良を行っているので、手を止めてしまうと、それまで築き上げてきたものが途絶えてしまう。というわけで、エサをあげたり、重量を測ったり、品質管理をしたりしていました。

 ストレスに強く、すぐに太るイエバエを育成

 土肥:ロシアに面白い技術はないかなあ? と探す一方で、イエバエにせっせとエサをやっていたんですよね。当時、どのような気持ちだったのでしょうか?

 串間:ワタシはビジネスマンではなくて、理系の技術者。ということもあって、目の前にいるイエバエに大きなビジネスチャンスがあることはよく分かりませんでした。ただ、飼料や肥料をつくることができるので、「世の中に必要とされるモノだ」と考えていたのですが、いつその日がやって来るのかよく分からず、エサをやっていました。

 そうした日々が続いていたわけですが、5年ほど前からちょこちょこ声がかかるようになりました。「この技術は面白い」「一緒にやりませんか」と。そろそろいいタイミングではないかと考え、2016年12月に会社を立ち上げて、イエバエ事業を引き継ぐことにしました。

 土肥:イエバエを使って飼料や肥料をつくりだすわけですが、そもそもどうやってつくっているのでしょうか?

 流郷:基本的な仕組みはとてもシンプルなんです。生ゴミや動物の排せつ物など有機廃棄物を用意して、専用トレーの上にイエバエの卵をパラパラとまく。飼育室に放置するだけで、大きく育った幼虫が飼料になって、幼虫の排せつ物が肥料になっているんです。不要なゴミがわずか1週間で、飼料と肥料になるんですよね。ちなみに、一般的なイエバエの場合、3週間ほどかかります。

 土肥:基本的な流れは分かりました。それにしても、なぜ45年間もかけて、交配を重ねて品種改良を続けてきたのでしょうか?

ハエも過密空間のなかで生きていくのは大変