生活保護費が現金支給される大阪市西成区役所。制度への関心の高まりを反映し、支給日には多くの報道陣が取材に訪れた。生活保護をめぐる不正受給はその返還に妙案がなく、「不正受給にペナルティーなし」とも揶揄されている【拡大】
“泣き寝入り”頻発
実際、自治体による返還金の回収は思うように進んでおらず、どの自治体も4市のような強引な手法に走りかねない現状がある。
厚生労働省によると、全国の不正受給額は単年度で173億円(平成23年度)だったのに対し、返還額は45億円。回収率は3割に満たない。この45億円には同年度以前の不正受給の返還分も含まれているため、実際の回収率はさらに下方修正して考える必要がある。
一方、天引きを行っていた八尾市の場合は、不正受給額が約2700万円(24年度)だったのに対し、返還額は約2500万円。全国平均との差は歴然だ。
そもそも、返還金は一括返済が原則だが、一度にまとまった現金を用意できる受給者は少なく、毎月支給される保護費から千円単位で分割返済する受給者がほとんど。完済まで数十年を要するケースも珍しくない。