家(home)で紡いだ(spun)ものだから、ホームスパン。もともと英スコットランド地方やアイルランドで、家庭で手紡ぎした糸で織った毛織物を指す。その技術は明治10年代、英国人宣教師により「自分たちで着るものは自分たちで作るように」と岩手に伝わったという。
ただし当時は軍服などに使う毛織物の需要が高まり、岩手に限らず主に東日本各地で緬羊(めんよう)飼育が奨励され、ホームスパンの技も伝授された。が、結果的に伝統産業として守り通したのが岩手の職人たち。今では全国の約9割が同県内で作られているそうだ。
「コツコツやったところが生き延びた」。盛岡市内でホームスパンを手掛ける中村博行さん(64)はそう語る。大正8年創業「中村工房」の3代目。妻の都子(くにこ)さん(64)と息子の和正さん(29)のほか、職人5人の協力により羊毛の手染めから糸紡ぎ、織りまで一貫製造している。