さまざまな人物の回想をつなぐ形で話は進むが、同じ場面でも、回想する人物が違うと事実関係が違ってくる“藪の中”の展開に。中村監督は見事に演じ分けをした井上を高く評価する。「とても手間がかかる、人によってはめんどうくさいと感じるような撮影でしたが、楽しんでやっていました。その前向きな気持ちがほかの出演者にも伝わって、現場の雰囲気が非常によくなりました」
劇中、音楽ユニット「芹沢ブラザーズ」が登場するが、演じているのは実際に音楽活動をしている実力派3人組の「TSUKEMEN」だ。「役者にちょっと楽器を練習させて、なんていうのとは全然違うシーンになった」と話す。
撮影中、中村監督は照明スタッフからの提案に胸が熱くなったという。ある重要なシーンの撮影は、当初の予定では1日で仕上げる予定だった。「照明の方から、『1日でやれないことはないんですが、2日あったらもっとやれますよ』って。こういうのってあまりないんですよ。ホン(脚本)が読めるスタッフなんですよ」。非常に複雑な作品だが、そんなスタッフに支えられ、程よい緊張感を保ちながら和やかに撮影できたという。