【書評】『俺の喉は一声千両 天才浪曲師・桃中軒雲右衛門』岡本和明著 (2/2ページ)

2014.8.3 14:27

 私は大阪で50年間、高校生と「吹奏楽」に取り組んでいます。毎日毎日が、前例のないことへの挑戦です。誰もやらなかったことを、新たに切り拓(ひら)きつづけていくことの厳しさにも、常に直面しています。

 雲右衛門が、一つの演目を完成するまでの試行錯誤の苦しみ、その過程で垣間見える芸人魂、あくなき挑戦。そして波瀾(はらん)万丈の人生の節目に見せる「人としての礼儀」には、まことに心を打たれました。

 当たると思ったことは、当たらない。

 いい人のまわりには、いい人が集まる。

 雲右衛門の生涯は、そんな、当たり前のことを、気づかせてくれました。

 あらゆるジャンルの方にお薦めしたい、そして、自分の親しい人につい贈りたくなる、そんな一冊です。(新潮社・本体2200円+税)

 評・丸谷明夫(大阪府立淀川工科高校名誉教諭・吹奏楽部顧問)

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