認知症で行方不明になる人が相次ぎ、事故に巻き込まれるケースも後を絶たない。家族の介護には限界があり、認知症の人が住み慣れた地域で暮らし続けるには地域ぐるみでの見守りが大切だ。近年注目を集める徘徊(はいかい)模擬訓練(声かけ訓練)はその一例で、各地に広がる。どんな訓練なのか。大阪府高槻市の訓練に参加してみた。(伐栗恵子)
会話が続かない
残暑の厳しい9月中旬の住宅街。記者の目の前を、グレーの帽子をかぶり、眼鏡をかけた男性が手押し車を押して歩いていた。服装や背格好などの特徴が事前に提供された徘徊役の情報と合致する、ような気がした。
「声をかけるときは1人で」「後ろから声をかけない」「相手に目線を合わせる」-。訓練に入る前に受講した「認知症サポーター」養成講座での注意点を思い出しながらしばらく様子をうかがい、意を決して声をかけた。
記者「こんにちは。暑いですね」
男性「はい」
記者「お出かけですか」
男性「はい」
うつむいている男性となかなか目線を合わせられない上、短い返事の繰り返しに焦りが生じてくる。何とか男性が「仕事」に行こうとしていることは分かったが、次の言葉を探しているうちに男性は先を歩いていってしまった…。