小林教授は「労働環境改善のために、声をかけてくる企業はある。だが、ほとんどは『新しい技術を知りたい』という程度。要は、絶対やるつもりでやるかどうか。アサヒサンクリーンは社運をかけて、最初から『これを使う』というスタンスで相談に来た」と言う。
同社にとって、開発は「死活問題」だった。入浴介助の負担が大きいのは、利用者の上半身を抱える男性スタッフ。加齢とともに腰痛がごまかせなくなり、辞める社員が絶えなかった。同社城東ブロック長の梶田泰央さんは「年数を重ねた社員は貴重だ。ぜひ、定年まで働いてほしいのに辞めていく。切実な問題でした」と振り返る。
以後、同社も開発に協力。現場の使い勝手を伝えた。介護ロボットの開発では、開発側と利用側に隔たりがあるが、それを乗り越えた意義は大きい。小林教授は東京理科大学発のベンチャー企業「イノフィス」を設立。来月、事業所向けに1台60万円の予定で本格販売を始める。