落語家の林家木久扇さん(野村成次撮影)【拡大】
照射でがんはすぐに消えたのですが、しばらく声が出ない状態が続いて、すごく不安でした。先生に「いつ声が戻るんですか」と聞いても、「がんをやっつけるための治療で、声のための治療ではない。通常は約2カ月で声が戻るが、実際に戻るかは保証できない」と言われました。落語家は声が出なかったらどうしようもない。絵を描いたり本を出したりもしてますが、それによる収入は微々たるもの。家族やお弟子さんも10人いるので、困ったなあと思ってました。
声が戻ったのは9月21日。朝起きて、おかみさんと顔を合わせたとき、「お父さん、おはよう」と言われたので、僕も「おはよう」。それを聞いたおかみさんが驚いて「今、声出たわよね」って言うから、僕は「なんで」。ちゃんとしゃべって答えられたんです。おかみさんは目をうるうるさせて、「結婚してからこんなによかったと思ったことはなかった」と喜んでくれた。
僕の方は「ありがたい。これでお金が入るぞ」とすぐ思いました。休んでいる約3カ月は無収入でしたから。昭和44年からレギュラー出演している「笑点」も、今回初めて12回も休みました。胃がんのときは入院しましたが、点滴しながら出演したので休まなかったんです。