貨物線だった廃線が、おしゃれな高架空中庭園に生まれ変わった「ハイライン」。ボードウォークのあちこちに、マンハッタンの街並みを眼下に見下ろすデッキチェアやベンチが配置されている。きっと太陽の光を浴びてくつろぐ人びとで、賑わうに違いない。そう、春になれば…。
「あ~あ、ここでキンキンに冷えたカクテルを飲んだら、最高でしょうねっ!」。
高架で風通しがよいため、凍えそうな寒風が、地上よりさらに容赦なく吹き付けるデッキチェアで、半ばやけになって記念写真を撮っているのは、スペインから観光旅行に来たカップルだ。「彼が見せてくれた雑誌に、ランチをしたりおしゃべりしているニューヨーカーの写真が載っていて、彼がローカル気分を味わいたいと言うから来たのです」と、彼女。「だって私はスペイン人ですよ。いくら寒いと聞いていても、ここまで寒くて、しかも誰もいないとは思いませんでした」。もめ続けていたのだろう。「ぼくだってスペイン人だから、わからないよ」。気の弱そうな彼氏が力なく呟く。