予想されたことだが問題はねずみのアルジャーノンの上にまず起こる。知能の退化が始まり死んでしまったのだ。未来に何が起こるか理解したチャーリーは自身にそのことが起こる前に家族と和解し恋人とも別れを告げる。次第に知能が低下し記憶を失っていくチャーリーの姿は哀しい。しかし物事を理解することはできないが温和な笑顔の青年に戻る。人間的な裏打ちのない知能なんてなんの意味もない、とでもいうように。(ダニエル・キイス著、小尾芙佐訳/ハヤカワ文庫・860円+税)
【プロフィル】永井多恵子
ながい・たえこ 演劇ジャーナリスト。平成20年までNHK副会長。現在、せたがや文化財団理事長、国際演劇協会会長。