『現代中国像の原点中嶋嶺雄著作選集1』中嶋嶺雄著(桜美林大学北東アジア総合研究所・4500円+税)【拡大】
新潟県立大の猪口孝学長はその幅広い教養や親しみやすい人柄から「人間の顔をした学長」と形容し、「こういう学長が日本に百人いれば大学もいい方向に変わる」と推薦文を寄せた。労を惜しまず教職員や学生の声に耳を傾け、改革案を練った姿である。
それは半世紀に及ぶ中国研究の姿勢そのものでもある。左翼全盛の論壇が賛美する文化大革命を、自らの目で検証して「究極の権力闘争」と断じ、動じなかった。「鋭敏な現実感覚と真の勇気をもつ知識人であったことを、著作集を通して知ってほしい」。渡辺利夫拓殖大総長の言葉は、強権で海外進出する現在の中国を考察する際の心構えを念頭にしたものだろう。
国際情勢を捉え、「大学にさらなる競争力を」と最期まで奔走した中嶋氏の著作は、グローバル時代の日本の若い学徒に大きな示唆を与えるはずだ。(桜美林大学北東アジア総合研究所・4500円+税)
評・平山一城(編集委員)