「天地(あめつち)にわれ一人いて立つごとき この寂しさを君は微笑む」
歌人の會津八一が、法隆寺夢殿の救世観音を詠んだ歌を桃紅さんは引用しながら、観音様を君と詠む作者に限りなく共感されているのだった。一人で立っているという會津八一の孤独と同じものを、たおやめの桃紅さんも持ち続けていた。それだからこそ、いつまでも美術家として現役なのだと思う。
それにしても、桃紅さんの長生きの秘訣(ひけつ)はなんだろう。「自然のなりゆきにまかせて、生きています」という。予定とか目標とかを、好まないという生き方に、気ままな私は思わずにっこりした。(幻冬舎・1000円+税)
評・太田治子(作家)