『永い言い訳』西川美和著(文芸春秋・1600円+税)【拡大】
果たして〈虚業のひと〉である津村は、妻を亡くした〈当事者〉の実感を得られたのだろうか。夏子の気持ちを考えたことがあるか、と迫る陽一に、津村がこのように言い捨てる場面がある。「関係性なんて、変わるんだよ」。正に本書は、移ろいゆく関係性を描いている。けれど変化があるからこそ、救われる場合もある。「他者の無いところに人生なんて存在しない」。「二人」は、それぞれが「一人」同士だからこそ面白い。他者と生きることの難しさ、その不器用な幸福を伝える物語だ。(文芸春秋・1600円+税)
評・文月悠光(詩人)