「分かった風になる」これが一番いけない 雇用主と従業員の関係 (3/3ページ)

2015.7.26 06:00

 もちろん、願わくば、自分の人生を台無しにするような事態は避けたい。ビジネスレベルだけでなく、プライベートのレベルでもこう考えている。そのために一方的な自己利益の主張だけではなく、会社や人とよい関係を作っていくのは、極めてセンシティブな課題と誰もが認識している。

 以上は必ずしも雇用主と従業員との関係の話ではない。しかし、本書はそうした過去の経験を想起させるに十分な示唆に富んでいる。例えば、次の部分は汎用性が高い。

 「会社と社員の価値観と将来の展望の整合性を取るのは難しい作業だ。だが、コミットメント期間を導入すれば、整合性が必要となるのは特定の任務が終了するまでの限られた期間となり、整合性にまつわる諸問題を解決可能なレベルにまで限定できる。(中略) 必要なのは、社員のコミットメント期間における目標と一致するよう整合性を構築することだ。なにも社員の「人生の目標や価値観」とまでも一致させる必要はない」

 そんな味気ない!と思ってはいけない。時間も仕事もできるだけブレイクダウンしていくと何とか折り合いがつくものだ。ただ、どちらの側も合理性にあまりに酔ってはいけない。

 社員が「自分を細切れにされている」との敗北感や欠乏感をあまりに抱くようだったら、まだ整合性はついていないと言ってよい。雇用主は社員の表情をもっと見つめ、頭の中を覗き見るべきだ。そして、社員も雇用主に遠慮は不要だ。

 分かった風になる。これが一番いけない。それが本書を読んでいるとよく分かる。なにせ、現在の多くの雇用関係は自己欺瞞だと指摘しているくらいだから。

 ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。

 安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

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