興味深いのが脳の中での理性と感情のバランス。実はこのときの脳の動きを調べると、島皮質と背外側前頭前野が面白い動きを示していた。島皮質は怒りなど激しい負の感情のときに活動性が高まる。そして、状況判断など理性的なコントロールにかかわるのが背外側前頭前野だ。
「提案を受け入れた人と拒否した人の背外側前頭前野の活動性はほぼ変わらず、合理的な判断が同じように働いています。一方、拒否した人は島皮質の活動性が高く、受け入れた人は低い。天秤に『感情』と『計算』があって、計算が勝ると合理的判断を下し、感情が勝つと拒否して『ちゃぶ台返し』をすると考えられます」(枝川氏)
怒りを感じたら咀嚼運動がお勧め
ここまで怒りの脳のメカニズムを見てきたが、ではキレないためにはどうすればよいのだろう。
西多氏は「太陽の光は睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を活発にするので、朝日を浴びることを推奨します」と話す。そして、ストレスを抑え、怒っていた状況を鎮めるオキシトシンを分泌させることも大事だと指摘するのが有田氏である。
オキシトシンを増やす方法にグルーミングがある。サルの世界では毛づくろいだが、人間の場合は親子、夫婦、恋人同士などでスキンシップを図っているのがベストだ。マッサージやエステなども有効である。
また、怒りを言語化するのも効果があり、枝川氏は「書くことで、自分自身を客観的に見られるようになります。感情を整理した言葉にして気持ちを落ち着かせると、かなり怒りをコントロールできます」という。