一方、頭に血がのぼったときの即効薬として、「顎の咀嚼運動が効果的」とアドバイスするのが山本氏だ。
「ストレスによって脳内で不安緊張物質のノルアドレナリンが活発に分泌されます。マウスの実験では、棒をグーッと噛ませるとノルアドレナリンが低下することがわかっている。人間も同じで、ハンカチをグーッと引っ張ると奥歯を噛みしめられます。ガムを噛むことで咀嚼運動するだけでも効果があります」
不安を吐き出すのも有効だそうで、山本氏は「プライドが邪魔をして、自分が不安や恐怖を感じていることを吐露しにくい。独り言でも構わないので、トイレの個室でつぶやいたらどうでしょう」と話す。
扁桃体はピリピリした空気にも反応する。1990年代以降、市場主義の下での競争が激しくなり、日本企業の中にもピリピリした雰囲気が蔓延し始めた。それでなくても日本人は不安遺伝子のせいで不安を感じやすく、その扁桃体は休むことなく活動し続けているのかもしれない。
そうした状況を打開したいのなら、経営者が率先して穏やかな表情になる必要がある。そうすればミドル層はトップの顔色を窺う必要がなくなって表情が柔らかくなり、社員も安心して働けるようになる。怒りのメカニズムを理解した賢明な経営者なら、これまで紹介した対処法を活用しながら実践できるはずだ。