専門医に聞くアルコールの科学 “飲むほど酒に強くなる”という常識のウソ(前編) (2/7ページ)

 「強い」か「弱い」かの基本は遺伝で決まる

 --酒に強い人と弱い人がいます。なにが違うのでしょうか。

 アルコールは体内に入ると、酵素の働きでアセトアルデヒドになり、その後酢酸になって、最終的に体外に排出されます。アセトアルデヒドは有害物質なので、頭痛や吐き気、動悸が速くなるといった症状が出るんです。「酒に弱い」といわれる人は、アセトアルデヒドの分解酵素が弱く、体内にたまってしまう人ですね。

 残念ながら、これは遺伝なので、途中から強くなることはありません。体内で有害なアセトアルデヒドを分解して無害の酢酸にする一番重要な酵素がALDH2(2型アルデヒド脱水酵素)です。この酵素は父親、母親から1本ずつ遺伝子をもらって1対(2本)になって作られるんです。ALDH2の働きが強いか弱いかは、次の3タイプに分けられます。

 1. 酒を数口飲んだだけですぐ顔が赤くなる下戸の人……「父から弱い+母から弱い」の遺伝子をもらっている。日本人の6%くらい。

 2. ワイン1杯で顔が赤くなり、たくさんは飲めないが、ちょっとは飲める人……「父・母のどちらかから弱い+もう片方から強い」をもらっている。日本人の約40%。

 3. 顔が赤くならない酒に強い人……「父から強い+母から強い」をもらっている。日本人の50%強。

「酒に強くなった」という人は、なぜ飲めるようになったのか