しかし、この光景が大阪市の南北を縦断する大阪メトロ御堂筋線の運行見合わせで発生した徒歩帰宅者の列であることには思いが至らなかったという。「帰宅困難者が出るというイメージを持てなかった」。担当者はこう釈明する。
東日本大震災では首都圏で約515万人(内閣府推計)に上った帰宅困難者。南海トラフ巨大地震の被害想定では、府全体で約146万人発生すると見込まれ、うち大阪市が約87万人を占める。「最初から帰宅困難者への警戒を高め、街中の状況をリアルタイムで把握する手段を確保することが課題だ」。府の担当者は反省を口にする。
ブロック塀
一方、ブロック塀の事故で見えてきたのは身近な危険に対する学校側の認識の低さだ。ブロック塀の危険性は昭和53年の宮城県沖地震を契機にクローズアップされたが今もルール違反の塀が数多く存在する。
福岡大の古賀一八教授(建築防災学)は「ブロック塀はどこにでもあり、風景に溶け込んでしまっているので、危険だと認識しにくいのではないか」と分析する。
高槻市の職員らは、女児が通っていた寿栄小のブロック塀が規定に適合していないことを全く認識していなかった。寿栄小以外に、同市で違法の恐れが発覚した15の市立小中学校の関係者も「違法という認識はなく、危ないとも思わなかった」と口をそろえる。